2023/07/15

ぼくが投資で3億ためてFIREした話 〜2007年 異動その4 ~

   


 

投資で金持ちを志してから2年ほどの月日が流れた。

 ぼくの会社内での評判は地に落ちていた。
楽園部署がお取り潰しになって花形部署に異動したぼくは、たった1年で同僚や上司からの信頼を失い、追い出されるように他の地味な部署へ異動となっていた。

そりゃそうだ。仮にぼくの脳を10個の並列処理装置に例えるなら、1個は自分が生きるための食事や睡眠について使い、3個は家族が生きるための様々な手続きや段取りについて使い、残りの6個うち3個は投資について処理していたのだ。申し訳ないが仕事に使っていたのは残りの3個のみだった。こんな状況では花形部署で仕事になるはずもない。

何せ花形部署はエリートでないと勤まらない所だった。英語ができるのはマストで、それプラス当然のように何らかの専門分野に長けている。文系なら国際的な会計や法律に明るく、第二外国語も当たり前。理系であれば英語ベースの論文や資料を読みこなし常に最新のレベルをキープできるような人材でなければ仕事にならない。そんな同僚たちの出身校は言わずもがなである。

世間では東大や京大なんか出ても何の役にも立たない、などと言う人がいるが、あんなものはうそっぱちだ。彼らは大体において集中力を持続できる時間が驚異的に長い。長すぎる。ぼくが10分で頭が疲れてしまうところ、何時間でもその集中力でやりきる。あれこそが受験を勝ち抜いてきたモンスターだ。

そんな中1人、今風に言えばFラン出身で、まして頭の3割しか動いてないようなぼくに何ができよう。こうなるのは当然の結末である。

 

ところでこれは余談だが、そうやってド底辺の窓際まで落ちた社員から見ると、周囲のどの社員が出世するか簡単に見分けられる。

この会社で昇進していく人というのは何事にも手を抜かず、誰に対しても差別せずサービス精神旺盛なのだ。ぼくのような底辺社員から来たメールでもすぐに返事をする。部長・本部長以上になるには、プレイヤーとしての能力プラス人徳が必要なのだ。

逆にせいぜい課長止まりで終わる社員は相手によって態度を変える。もちろんぼくの依頼は後回しだ。これはかなり高い確率で見分けることができた。ひどいケースでは話しかけても返事もしない人がいたが、その人はやはり係長止まりだった。しかもこの会社のいやらしいところは、それ以上昇進させないと決めた管理職からは露骨に部下を抜いていく。この人も最後は部下1人の寂しいチームリーダーだった。

 

それはさておき、その底辺社員がなけなしの頭を使ってやっている投資の方はどうだったかと言うと、これはソコソコ順調に来ていた。

いろいろと試行錯誤を重ねた結果、投資スタイルは成長国への長期投資に落ち着き、まずまずの成績を残せるようになっていた。金額的にそれほど儲かっていたわけではないが、投資の世界では負けないだけでも大したものなのだ。

ぼくはまあまあの高給に節約を重ね、入金力を最大にした上で年平均数%の利回りを実績として出しており、ようやく資産規模は一千万円を超えたところだった。株はかなり昔から多少嗜んではいたが投資を真剣にやろうと決めてからはまだ僅か23年だ。それでここまで来られれば及第点ではないか。

これならこの先も何とか続けていける、ぼくの心には少しそんな自信が芽生えてきた。

確かに道はまだ長い。一千万円の資産が生み出す収益は給料に比べれば微々たるものだ。しかしこれを続けていけば、きっとぼくは金持ちになれる。今仕事なんかに時間を使っている同僚たちはバカだ。これまでの人生は圧倒的に勝ってきたかもしれないが、肝心なところが抜けている。絶対に最後に勝つのは自分だ。ぼくはそう意気込んでいた。

 

しかし、その意気込みは長くは続かなかった。その時は突然にやってきた。

2008年、最初はジリジリと下がるだけだったのだ。それが突然あんなことになるなんて、予想だにしなかった。

【次回へ続く】

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