効率的市場仮説という有名な株の理論があります。
「現時点での株価には利用可能な全ての情報が直ちに織り込まれるので個別株の銘柄選択で市場平均に打ち勝つことは難しい」という理論です。
これは将来の株価は過去の値動きとは関係なくランダムに変動するという、ランダム・ウォーク理論の元になりました。
この理論について、私は市場にいる全ての人が「利用可能な情報を合理的に利用しているキレ者ばかり」とするのはいささか無理があるなあ、という感想を持っています。
だって市場に長くいると、市場ってこんなに意識低い系の人多いの!?という事態を目の当たりにするんです。
最近の例では、2015年9月28日に福山雅治が入籍を発表した翌日、所属事務所の4301アミューズが暴落しましたが、この「福山ショック」の陰で9075福山通運も大きく動いていました。
理由は「福山つながり」だそうです。
他にも大昔の話で恐縮ですが、まだネットで株取引が出来なかった時代はみんな新聞の株式欄を見て株をやっていました。
株式欄は全銘柄の四本値と出来高が証券コード順に毎日載っているというものですが、ある企業の株が不祥事で暴落すると前後の銘柄も人目に触るわけで、それでついでに売られるという事がよくありました。
つまり下がった理由は「証券コードが近かったから」です。
宝くじの前後賞は嬉しいですが、暴落の前後賞はいらないですよね。
実際にこんな事が市場でしょっちゅう起こっているなんて、効率的市場仮説を机上で議論しているようなセンセイ達は知っているんでしょうか。
ちなみに、効率的市場仮説と双璧をなす理論として、行動ファイナンス理論があります。
「投資家は必ずしも合理的ではなく感情や心理状況に左右されるため、バブルのように市場全体が誤ったコンセンサスのもとで企業業績などのファンダメンタルズからの大幅乖離も一定期間続く可能性がある」という理論です。
従って効率的市場仮説では否定される「アノマリー」もありうるという立場です。株のアノマリーとは10月は株が下がるとか、米国で大統領選の年は株が上がるとか言うものですね。
どちらも有名な理論なので、投資家なら概要くらいは両方とも把握しておきたいです。
2013年のノーベル経済学賞では、効率的市場仮説を提唱してきたユージン・ファーマと、行動ファイナンスのロバート・シラーの両方が受賞して話題になりました。
どちらかが正しければもう一方が間違っているわけで、この両理論に賞を与えるとはノーベル賞のポートフォリオもなかなかのものですね。
FIREを達成した管理人による思考の備忘録。著書『投資で「3億円FIRE」したぼくがすすめるたった2つのこと』
2016/05/27
2016/05/06
株≠テクノロジー
金融工学を極めると株でもっともリスクあたりのパフォーマンスが高いのはインデックス投資ということになるらしいですが私はこれは信じていません。
というのも、私はそもそも相場は「工学(テクノロジー)ではない」と思っているからです。
その理由は、これまで相場をテクノロジーだと勘違いした秀才たちがLTCMやリーマンショックのような数々の経済的破滅を引き起こしてきたからです。
じゃあ相場は何なんだというと、私はアートとかスポーツに近いのではないかと思っています。
イチローが3割打てるのは、それはイチローだからでしょう。それを「イチローが3割打てる理由」をテクノロジーで解明しようとして、しかも出来たような気になっている人がいたら、相当オメデタイ人でしょう。
株の悪魔じみている点は、いいところまでは工学チックな法則も見えるっぽいところで、そのせいで研究者にあらぬ期待を持たせてしまうことです。そこで分かった気になってフルレバレッジで勝負しようとする秀才は破滅へまっしぐらです。
そう思っていれば、バフェットが驚異的なパフォーマンスを継続しているのはバフェットだから、とシンプルに考えればいいわけで悩みも一つ減りますね。無理にバフェットの一挙手一投足をウォッチする必要もなくなります。
そして自分は自由に自分が最も得意なスタイルで、この資本主義というゲームで成績を残すことをストイックに追及すればいいわけです。
さらにそれで成功しても、そのやり方は誰かに真似をされる心配もないでしょう。イチローのビデオを1000時間見たって、イチローにはなれません。