2023/06/10

ぼくが投資で3億ためてFIREした話 〜2022年 プロローグ~



〜〜〜 2022年 プロローグ 〜〜〜

今から退職を申し出る。

最初にFIREしようと決意してから一体何年経っただろう。ぱっと振り返っても十数年は経っているはずだ。FIREがまだアーリーリタイアと呼ばれていた時代から今日この日を待ち望んでいた。

既に退職を申し出るためのズーム会議の依頼メールは書き終えた。後は送信ボタンを押すだけだ。これを押したらもう二度と後戻りはできない。考えに考え抜いたとは言え、やはり少し緊張する。なんだかんだ関連会社を含めれば20年以上勤めた会社だ。

“緊張”は辞めるリスクに対するものではなく、まだ何か考えに漏れがあるのではないか?どこか計画に大穴が開いていたりしないか?と言うものだ。会社には何の未練もない。

――― もう何年も考えた。いまさら新しい事など何も出てきやしない! ―――

そう思った直後、ぼくは普段より人差し指をやや大振りにし、思いきり送信ボタンをクリックした。賽は投げられた。


 ズーム会議は始まった。参加者は副部長と課長とぼくの3人。ぼくの会社では退職を告げるには直属の上司とその1つ上に申し出ることになっている。ぼくはありきたりの理由を並べ退職を申し出た。とにかく辞める事は決まっているのだ。無駄にごちゃごちゃ話したくない。それには絶対に上司に引き止めの口実を与えてはならない。結局はありきたりの理由が最も良いのである。

 会社の愚痴を言うなんてもってのほかだ。そんなこと言えば、改善するから考え直してくれないか、などと言われ面倒この上ない。

――― 俺はやめたいんだよ!こんなとこ1秒たりとも居たくないんだよ! ―――

まあ引き留めなんて事はいらない心配かもしれない。なぜならこの副部長は知らない仲ではない。10年以上前のぼくの直属の上司であり、当時散々困らせた覚えがある。正直言ってぼくの事は辞めて欲しい社員と思っているかもしれない。


 一方、課長はぼくが辞めることなど一切頭になかったようだ。ズーム会議の依頼メール送信後、あれ〜本当〜?全く気づいてなかったよ〜、という妙に馴れ馴れしい返信が来た。

この上司、いつも部下とは仕事以外の話は一切せず、突っ込んだコミュニケーションなど取ったためしがない。それなのに突然この馴れ馴れしい返信。これは正直いって気持ち悪かった。
 まるで中学生が好きな女の子の前でキョドる如くイタい。ぼくは少しの間とはいえ、こんな小物の下で働いていた事が恥ずかしく悲しくなった。でもまあいい、それもこれも、もう終わりだ。 

 会議ではぼくが一方的に話し、特に慰留もなく数分間で終了した。20年働いて数分間で終わりというと普通の人なら何か悲しいと思うかもしれないが、ぼくにとってはむしろ好都合。ぼくにとってこの会議は無事退職するまでの何段階かある単なるステップの1つであり、ステップを一つ一つ滞りなくクリアしていくことが最重要なのだ。

 

 しかし、ぼくはなんでこんなに会社に愛着がないのだ?まがりなりにも20年も働いていればプロジェクトが無事終了したり、同僚に感謝されたりといった経験をしながら少しは仕事に対する喜びを感じるものではないだろうか?

実際、ほとんどの人は嫌な仕事の中からたまにあるそういった一つ一つの小さな喜びを拠り所にして、何とか定年までやって行っているのではないか。ぼくにだってそうして普通のサラリーマンとして歩む人生だってあったはずだ。

それがぼくときたらプロジェクトが無事終了し顧客が喜んでも、ただ仕事が終わったと思うだけだし、同僚に感謝されてもああ、そうですか、よかったですね、でも俺とお前は違うんだ、俺はそんなことで喜んでる場合じゃないんだ、と斜に構えているだけだった。

 ぼくはどうしてこうなってしまったのだろう。

 いつから、何がきっかけでこうなってしまったのか。

そう思った瞬間、ぼくの脳裏にこれまでの出来事が洪水のように浮かんできて、止まらなくなった。

【次回へ続く】

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