久しぶりに投資関係の書籍を読みました。今回は日本の本です。
私のkindleには未読の投資関係の訳書がかなり溜まっているのですが、訳書は独特の読みにくさがあるので読み始めるのにどうしても気合いが要ります。
今はちょっとその重い腰が上がらないので、今回は和書を選択しました。やはり日本人によって書かれた本は読みやすいですからね。
初心者は読みやすい和書の中で良いものから読むのも一手でしょう。訳書には優れたものが多いのですが、読むのに挫折してしまっては元も子もないですから。
ということで今回手に取ったのはこの書籍。
超実践! 順張りスイングトレードの極意;損小利大がどうしてもできない人のために 荻窪 禅 (著)
これを選んだのはボラティリティによるトレンド判断に関する内容だったからです。
実は私は重要な買い場判断にボラティリティを参考にしています。私がこれまで主に見ていた指標はVIXで、これを参考にした投資は我ながら得意と自負している一方、長年課題も感じていました。
というのも私のこれまでの投資人生の中で超長期の3回の上げトレンドがあり、このうち2回は乗ることに成功したおかげで今があるのですが、裏を返せば一回は失敗したということです。
この失敗がなければあと2年は早くFIREでき、資産も倍になっていたかもしれないと思っているほどです。
成功したのはリーマンショック後のラリーとコロナショック後のラリー。失敗したのは2016年からのGAFA中心のラリーです。
この成功と失敗の違いは何かというと、成功パターンが暴落後のからのトレンド転換なのに対して失敗はヨコヨコからのトレンド転換という差です。そう、VIXを参考にしている限り、ヨコヨコからの変化は掴み難いのです。
また、ある程度資産ができた今となっては、VIXではヨコヨコからの突然の暴落から資産を守れないという課題もありました。
もちろん、今私がメインにしているインデックス投資とはそういった上げも下げも付き合っていくほうが結果的にまあまあよい結果になるというものですし、実際それがベターなのですが、これから起こりそうなことを予め予想できるという事は、実際に売買を実行するかどうかに関わらずメリットは大きいと思います。
例えば事前にある程度下落が予想できるなら、どちらにせよ生活費として取り崩す予定だったのを早めにやっておくとか、売らないまでも少し買い増しするのを停止しよう、などさまざまな対応ができます。
本書はまさにそんな私のニーズに合致したというわけです。
ちなみに、ボラティリティはチャートを元にしたものですが、チャート由来のテクニカル指標に関してこれまでの私の基本的なスタンスを述べておきます。
まずテクニカル指標は単にそう信じている人が多ければ多いほど本当にそう動く、という面があります。そこに動意の根拠はなくとも構いません。
極端な話、単にテスタさんが買ったせいでチャートが動いたら、その動きを根拠にトレードするトレーダーが集まってきて、本当に相場になる、ということも起こりえるのです。勿論、長期的には実需がトレンドを作り仮需がボラティリティを作るので、それはごく短期で終わるはずですが、それでも一時的には実際に株価が動くことは事実です。
テクニカル指標はそういうものですから信者の数が一番大事なのです。現時点で米国株で一番信者が多い指標は、米国株で有名な広瀬隆雄氏によると50日200日移動平均線とのことなので、それが最も注目に値する指標であって、他の信者が分散している細かいマイナー指標は私はあまり利用価値を感じていませんでした。
その点トレンド転換点を示すパラボリックや、著者が推薦するボラティリティブレイクアウトは移動平均に比べるとややマイナーな部類に入るでしょうから、私個人の価値観では注目度はもう一つということになります。
この点について特にどうなんだろう?と念頭に読み進めていったところ、いやはや、これは自分の了見の狭さを痛感しました。
本書では盲目的にシグナルに従うのではなく、同じ指標でも短期・長期・市場を変えて何パターンも見て、さらに他の指標やファンダメンタルズまでも勘案して判断すると述べられています。
つまり、シグナルは「どんな時でも冷静沈着な優秀な部下」の助言として自分を自制するために利用するわけです。あくまで主体は自分なわけです。なるほど、言われてみれば当たり前なのですが、なぜこの点に今まで気付かなかったのか。それならばこういったテクニカル指標は見ないと決め打ちするのではなく、知っておくことでメリットがあろうというものです。
また、本書を読んでいてハタと気づいたのが、こういったシグナルを利用するメリットとして、市場の優秀なプレイヤーの間では当然とされているにも関わらず、自分が咀嚼できていないことに気づく、という事があります。
私が2016年からのラリーで置いてけぼりをくらったのも、私がアメリカの景気への疑問を持っていた横で、市場の優秀な人はとっくに不況のリスクは去った、というのが共通認識だったことになります。
チャートにはそういった市場の総意が現れてきますから、仮にチャートだけ見ていても何かの異常には気づくはずだったのではないか。
そう思った私は、さっそく本書で紹介されていたTradingViewというサービスでS&P500の当時のボラティリティブレイクアウトを調べてみることにしました。
上はその結果です。これを見ると2015年9月ごろには下げトレンドに転換。2016年の春過ぎには明確な上げトレンドに転換しています。
もちろん、このストラテジー作者によるバックテストで過去のチャートに最適化した結果、このような明確なサインになっているかもしれません。しかしそれを割り引いてもリーマンショックやコロナショックでもなかなかのサインを出しているように思えました。
従ってもし私が当時このボラティリティブレイクアウトを見ていたら、この明確なトレンド転換シグナルを見て自分に何かの間違いがあることに気づき、途中からでも大きなラリーに乗ることができた可能性があったのです。
また、今後にじわじわと下がり始めた場合でも、それが脱兎のごとく逃げだすべきなのか、いやいやまだ一時的な調整なのか、という判断の際の助けになります。少なくとも一部のトレンド転換がシグナルを出し始めた段階で、警戒モードに入ることはできます。
そのことで、自分の中で注意すべきニュースなども変わってきて、より精度の高い予測が可能になるでしょう。その上で実際の売買をするかどうかは、もう一段上で考えたらよいのです。
つまり本書で推奨されるボラティリティブレイクアウトを利用することで
- 自分が咀嚼できていない要因に気付くことができる
- トレンド転換した可能性の警戒モードに入ることができる
というメリットがあるわけです。
また、本書はボラティリティブレイクアウトを利用したトレードを主眼に置いた書籍ですが、トレードにおいての鉄則は1にも2にもリスク管理(生き残り)であり、トレンドフォロー(順張り)です。
そういう基本も勿論述べられていますし、その他日本市場独特のクセやトレード時の心構え等、興味深い内容が多く、しかも読みやすいので初心者から上級者までおすすめできる内容となっています。