私は日本株への投資割合は非常に低く、数えるほどの個別株を少し持っているにすぎません。
資産の大部分を投じない理由の一つは、どうもスッと納得できる指数ETFがないということがあります。だからと言ってもっと個別を増やすのも、そもそも個別株は管理が大変ですし、規模的に世界のリーダーでもない日本市場でそれだけ頑張るのどうも気乗りもせず、という感じでした。
そんなイマイチな日本市場の代表的指数はTOPIXや日経225ですが、株主目線からすると投資に値しない会社が多数含まれています。米国株の財務諸表を見慣れた目でそういうダメ企業の財務諸表を見ると嘔吐感が湧いきてしまうほどです。
「そりゃあこれじゃあ最近始まった新NISAも8割は外国株に行くわな・・」と思っていたところ、なんとそんなブヨブヨした企業を除いた有望な筋肉質ETFが出来てるじゃないですか!
そのETFが2024年1月24日に上場した「JPXプライム150指数」に連動する上場投資信託ETF「iFreeETF JPXプライム150」です。
このJPXプライム150がこれまでのメジャーな指数と違う点は企業の稼ぐ力にフォーカスし、それを「収益性」と「市場評価(将来性)」に分解して銘柄が選定されていることです。
これによりS&P500などの欧米の代表的な株価指数と比べても遜色のないクオリティの株価指数を目指しているとのことです。
この2つの分解要素でなぜ稼ぐ力が分かるのかと言うと両方とも価値創造が見込まれるからです。
このうち「将来性」は、プライム市場でPBR1倍以上の企業から時価総額順に上位75社となっており、これはつまり、資産価値以上の時価総額が市場でつけられているトップ企業→投資家がその企業が価値創造をしていると認めている、と推定されます。
そして「収益性」は、プライム市場上場企業の「エクイティ・スプレッド(ROEー株主資本コスト)のプラス幅の大きい上位企業」で、ROEは最低でも8%となっています。
これについて以下に少し詳細に述べます。
株主資本コストは企業によって違いますが一般的には7%程度が平均と思われますので、ROEが8%以上ならエクイティ・スプレッドはプラスである確率は高いでしょう。プラスなら投資家はその企業が価値を創造していると認めることができます。
もっと平易に書けば、これは調達資金のマイナス利回りより、事業によるプラスの利回りのほうが大きければその企業は価値創造している、と言い換えることもできます。
これはめちゃくちゃ単純化して思考実験してみれば分かり易いです。例えば仮にここにせどりでもなんでもいいので元手の10%の利益が出るビジネスがあるとします。つまり1000万円が一年で1100万円になるビジネスです。これを毎年続けていけば儲かるのは分かったのですが、元手がないので借金をするとします。
このとき、この借金をサラ金から年15%で借りたらどうでしょう。せっかく100万儲けても金利で150万払ったら損してしまいます。ここでいうせどりがROEにあたり、借金が資本コストです。このようにROEが資本コストに負けていると企業は価値を毀損していることになります。
しかしここで「いやいや、企業が株式公開で集めたお金には利払いも償還も必要なく、完全にフリーなお金ではないか。借金とは違うのだよ」と普通の人は思うかもしれません。
いや、一般人のみならず、私は日本のプライム上場企業の社長の半分は同じ考えである疑念さえ持っています。そして、これが私がこれまで日本株に投資したくなかった最大の理由でもありました。
私がそう思うのは、確かに株主資本コストはゼロというのは短期的にはそうかもしれませんが長期ではどうでしょう?例えばある株主が企業に出資した場合、その株主は一生儲けゼロでいいよ、という気持ちでお金を出したのでしょうか?違うでしょう。それどころか普通の株主の本音といえば
それにつけても金が欲しい!
最低でも年利7%は欲しい。いや、個別やるなら20%だな!
自分さえ儲かれば後はどうでもいい!(笑)
なんてのが普通じゃないでしょうか。するとそんな気持ちで投資した投資家が、そんな考えの社長や、期待以下の実績しか出し続けない株をもっていたらどうするでしょうか。
それはそんなクソ株はソッコー「売り」です。
そして来る日も来る日も株は売られ続け、最終的にその企業が持っている現金以下の時価総額まで売り込まれます。つまり10万円の入った財布が5万円くらいで売っている状況です。もし企業を丸ごと買収して解体することができれば間違いなく儲かるPBR1倍以下のネットネット株が出来上がります。
つまり、資本コストを無視した経営が万年PBR1倍以下という事態を招いてるわけで、バリュー株が万年バリュー株のまま、というバリュートラップの原因なのではないでしょうか。
そしてそんなダメ会社が本当にどこかに買収され、経営陣が蹴りだされて解体されるなら市場からいなくなるので全く問題無いのですが、なぜか日本の場合はこういった行為は無条件で「ハゲタカ」と敵視され、仮に裁判になってもなぜか企業有利な判決になり、結果的に市場に居続けることが多いようです。このJPXプライム150には、そういったダメ企業が自然と入れ替わる仕組みが組み込まれており、これなら投資してもいいかなと思ったわけです。
それでも日本にはまだまだ解雇規制など海外株と比べて不利な点が残されてはいますが、もしこの指数が有名になって規模が大きくなり全企業がこのJPX150入りを目指すような風潮になれば、日本企業は資本コストを重視したまともな企業を目指すことになり、非常に日本にとっても投資家にとってもメリットとなるでしょう。(JPX400の二の舞を踏むことにならないことを祈ります)
まあ肝心のパフォーマンスの方は残念ながら今のところTOPIXや日経平均に負けまくってるようですが、前述のとおり指数の性格からいって外人好みなので海外の投資家に見つかって人気が出てくればワンチャン日本版S&P500になるかもしれません。
少なくともパフォーマンスで負けてでも、私なら日経平均やTOPIXを買うよりはホールドする精神的なコストは低く感じます。
※ちなみに一番上のアイキャッチ画像はAIが考えた”JPX150のイメージ”だそうです。めっちゃブルww